「預金金利、上がったらしいよ」。妻にそう言われて、久しぶりに銀行のサイトを見ました。たしかに上がっている。少し嬉しくなって——ふと、スーパーの卵の値段を思い出しました。あれ、これ、本当に「増えて」いるのか?
結論を先に言うと、金利には「見た目の金利」と「本当の金利」があります。この2つを区別できると、「金利のある世界が戻ってきた」というニュースの読み方が一段深くなります。
名目金利は「通帳に書いてある数字」
銀行のサイトやニュースに出てくる金利は、すべて名目金利です。年0.5%なら、100万円が1年後に100万5,000円になる(税金は省いた概算です)。数字としては確かに増えています。ここまでは疑いようがありません。
でも、お金の目的は「数字を増やすこと」ではなく「モノやサービスと交換すること」ですよね。だとすると、本当に問うべきはこうです——1年後のそのお金で、いまより多くのものが買えるのか?
実質金利は「買える量で測った金利」
そこで登場するのが実質金利です。ざっくりした式はこれだけ。
実質金利 ≒ 名目金利 − 物価上昇率
計算例で見ましょう(すべて概算です)。金利0.5%で預けた100万円は、1年後に100万5,000円。ところがその1年で物価が2%上がると、去年100万円で買えた量のものには102万円が必要になります。手元の100万5,000円では、去年の100万円分が買えない。数字は増えたのに、買える量は減った——これが実質金利マイナス1.5%の世界です。

ここが今日の核心です
利上げが始まっても、物価上昇率が金利より高い間は、実質金利はマイナスのまま。つまり「実質的なマイナス金利」は、利上げのあとも続いている可能性がある。
「金利のある世界が戻ってきた」という言葉は、名目の世界の話です。あなたの預金の実力(購買力)がどうなっているかは、金利と物価上昇率をセットで見ないと分かりません。これは実質賃金——給料が上がっても物価がそれ以上なら実質は目減り——とまったく同じ構造です。名目と実質。この物差しの使い分けが、経済ニュースを読む基礎体力になります。
借りる側から見ると、風景が反転する
たとえば固定金利で住宅ローンを組んでいる人。物価と給料が上がっていく世界では、毎月の返済額は変わらないのに、収入に対する返済の重さは少しずつ軽くなっていきます。インフレは預金者から借り手へ、静かに富を移す——教科書はこれを「インフレの再分配効果」と呼びます。住宅ローン金利の記事とあわせて読むと、立体的に見えてくるはずです。
で、私たちはどうすればいいのか
①金利のニュースを見たら、必ず物価上昇率(CPI)と引き算する癖をつける。これだけで「名目のぬか喜び」を卒業できます。②預金は悪ではありません。すぐ使うお金・生活防衛資金の置き場としての役割は変わらない。ただ「増やしているつもりが実質目減り」という誤解だけは手放す。③長期の余裕資金の置き場については、預金金利の記事や新NISAの制度解説を参考に、ご自身で判断してください。
💬 経済太郎の本音
白状すると、私は「0.001%が0.5%になった」系のニュースで一度ちゃんと喜びました。500倍!と。でも卵の値段で我に返った。人間はどうしようもなく名目の生き物です。だからこそ「金利を見たら物価と引き算」を、考えなくてもやる習慣にしてしまう。意志より仕組み。家計はそれくらいでちょうどいいと思っています。
よくある質問
Q. 実質金利はどこかで公表されていますか?
A. 「これが唯一の実質金利」という公式の一本の数字はありません。物価上昇率に何を使うか(実績か、市場や家計の予想か)で値が変わるためです。実用上は「手元の金利−直近のCPI上昇率」で自分用の概算を出せば十分です。
Q. 日銀は実質金利を見ているのですか?
A. 見ています。金融政策の効き方を考えるうえで、名目金利だけでなく実質金利の水準が重要になるためです。「利上げしても実質ではまだ緩和的」といった解説は、まさにこの考え方です。
次に読むなら
→ 実質賃金とは?給料が上がっても貧しくなる理由
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※本記事の計算はすべて概算例です。特定の金融商品の売買や預け先の変更を勧めるものではありません。

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